あの人が中学にあがってからがむしゃらに練習してきた。
あの人とまた野球をするために、あの人を勝たせてあげるために。あの人に笑われないために…。

いや、ただ単にあの人と一緒にいることができるように…。

そして俺も中学にあがった。あの人は思ったとおり野球部に入って頑張っていた。
俺も迷うことなく野球部に入部した。あの人の傍に居たいから…。

「貴博くん!!久しぶり!」
部室で見つけたあの人に声をかけた。

「おお、竜也久しぶり。でも部活中は先輩って呼べよ。まぁ俺は気にしないけど他の奴がな、、、部活中だけだけどな。」

「あ、わかりました。先輩!」

「よ〜し。やっぱ竜也はかわいいな一段と背は高くなってるけど、、、」

「先輩は相変わらずちっちゃいですね。俺とこんなに差がある…」
竜也が言い終わらないうちに貴博が蹴りを入れた。

「うるさい!ちょっとは先輩に敬意をはらえ。」

「はいわかりました。『先輩』」
あえて『先輩』と言うことを強調させた。
先輩は笑っていた。俺の大好きな顔だった。人を照らしてくれる顔だ。

「ほら、竜也アップにキャッチするぞ。」

「あ、わかりました!」
俺はグローブを手に取り先輩が待っている方へと走って行った。
先輩とそばにいられるそれだけで幸せだった。

他愛のない話をして部活が休みの日には部員で集まって馬鹿やって遊ぶ。
それだけでよかった。

ただそれだけでよかったはずなのに…。







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