俺が野球を始めたのは小学校の2年ぐらいだったと思う。小学校の校庭で野球をしているのを見てかっこいいと思った。
そんな何気ない理由だった思う。
それから親に頼んで、そのチームの監督に挨拶をしてすぐに入団した。

運動神経はいい方だったし、人懐っこい性格だったので難なくチームにもなじむことができた。

そのチームにその人はいた。その人は面倒見もよくて低学年から見ていい兄ちゃんだった。
いつも笑顔で練習熱心で野球が上手くていつもチームの中心にいた。
そんなあの人に兄弟のいない俺は本当の兄のように慕い憧れた。

だから1つ上のその人が引退する最後の試合で絶対に勝とうと思った。
最後にチームみんなで笑いあって安心させて引退させてあげようと思った。

そのころから背が高く体つきがよかった俺は、ポジションはキャッチャーだった。

試合は序盤に先制点を取り順調に進んだ。相手チームはいつもトーナメントの上位に食い込んでいる強豪チームだったが五分五分の試合だった。

だが、ある1球で試合の流れが変わった。

2ストライクの2アウト
ストライクゾーンすれすれの外角低めに俺がリードした球は俺のキャッチャーミット独特の乾いた音をたててはくれなかった。
その代りバットとぶつかり合う高い金属音がした。

キーンという音と共にボールはピッチャーの頭上を越え外野へと運ばれた。
咄嗟にランナーの位置を確認したが2塁にいた走者はすでに3塁を蹴ってこちらに向かい、今打った奴なんかは足が速くもう1塁を蹴っていた。

もう間に合わないことが瞬時に分かった。3塁を蹴ってこちらに向かっている奴はもう間に合わない。
せめてもう一人の走者を2塁で止めなくてはいけなかった。

しかし、焦ったのかボールを取りこぼし挙句の果てに大暴投で白球はグラウンドの隅へと力なく落ちた。
その間に2人目の走者も還ってきてしまった。1対2で逆転されてしまった。
思わずボールを取りこぼしてしまった外野の選手を睨んでしまった。

睨まれた選手は目を合わせようとしなかった。舌打ちをして地面をける。

試合はその後俺たちにチャンスは回ってこなかった。
審判のゲームセットを告げる声が空に高らかに響いた…。






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