先輩の舌が僕の中に入ってくる。舌が出入りする度にクチュクチュという卑猥な音がする。
それはとても甘くしとやかにお互いを求めあうものだった。

「裕也、裕也…。」
貴博は裕也の体をベッドに押し倒し素直に裕也を求めた。とても激しく、率直に…。
ベッドがギシギシと軋む音が二人の行為とは裏腹に静かな部屋に響く。

「先輩…。」
裕也が小さく呟いた。その顔を見ると、うっすらと涙が浮かんでいた。
俺が裕也を悲しませた。いくら自分からでは無いとはいえ、竜也の腕に抱かれた。そんな自分のことが許せなかった。
今この場所で裕也を泣かせている自分のことが…。

そしてまた裕也の唇に自分の唇をそっと重ねた。

「裕也、俺馬鹿だから裕也がどうやったら笑ってくれるかなんてわかんないけど、俺は裕也のことが好きだから。俺は裕也にいつも笑っててほしいから。俺どうしたらいい?」

「先輩、もういいんです。僕も先輩のことが好きです、ただそれだけでいいんですよ。」

「あぁ、わかったよ裕也…。俺は今からお前だけを見ていけるようにするからな。」

先輩はそう言ってくれた。だけど、それでも涙は止まらなかった。ベッドの上で体操座りをして膝に顔を埋めたまま涙を流し続けた。
この涙は理屈ではない今までの想いが止め処なく溢れてきているものだ。悲しい訳でも、ましてや嬉しい訳でもない。それでも涙は溢れてきた。

そんな僕のそばにそっと先輩はたたずんでくれていた。先ほどのキスのように激しくなくただ静かに僕の背中をさすってくれた…。
僕がやっと落ち着いた頃に1階から夕食を知らせる母の声が響いた。

「じゃあ俺はもう帰るからな。また明日な裕也…。」

「うん、また明日、、、」
そう言って先輩は僕の部屋を出て行った。それから程なくして家のドアが閉まる音がした。
その音を聞いて僕は1階へと降りた。
泣き腫らして赤くなった眼をみて母は少し驚いたような顔をしたがそれには触れずにいてくれた。

夕食を食べ終え浴室へと向かい服を脱ぎ湯船につかった。
自然と安堵の溜息が出る。

そのころ2階に置いてある携帯電話に新たなメールが受信されていた。
画面に文字が映し出される。

「竜也/title:話がある」






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