良太が出て行ってからずいぶん時間が経った。良太は「この前の公園」のことを聞いて飛び出して行った。
多分そこには先輩もいる。だけど、今の僕には先輩に会う勇気はなかった。

先輩は竜也と抱き合っていた。その姿は暗くてよく分からなかったけど確かに先輩だった。
やっと心が通じ合ったと思っていたのに…。

そう思うとまた涙が流れてきた。その涙はとめどなく溢れ枕を濡らしていった。

階段を上がる音がした。その足音は部屋の前で止まり。同時にドアがノックされた。

「裕也、先輩連れてきたからな。」
入ってきたのは良太だった。そして先輩も…。

「じゃあ俺は行くからな。」
そう言って良太は出て行った。それでもドアには人の気配がした。おそらく先輩だ。

僕は顔を合わせることができなかった。と言うか合わせたくなかった。

僕がずっと黙っていると先輩が先に口を開いた。

「裕也…。ごめん!俺わかんなくて、、、どうしたらいいかわかんなくて、、、竜也が俺のこと好きなんてわかんなかったし、気付いたら竜也に抱かれてて、、、」
先輩の声は少し泣きそうに、独り言のように言った。

「ごめん。俺、本当になんにもわかんなくて、、、でも、これだけは言える。
俺は裕也のことがこの世界の中で一番愛しているし、竜也のことは何とも思ってない。」

(先輩…。愛してるって…。竜也のことは何とも思ってないって…。)

「裕也。ごめんな俺、嫌われるのいやだし、気取ったりして裕也のことだけ考えてやれなかった。でも、それでも、俺はお前のことが好きだから…。」

僕はそこで初めて先輩の方を向いた。
「僕も先輩のことが好きです。でも、僕も分かんないです。信じてきたつもりだったのに…。」

「わかってる…。」
先輩はそう言うとベッドに横たわっている僕に近づいてきた。
そしてそっと背中に手をまわすとしっかりと抱いてそっと耳元で囁いた。
「ごめんな…。愛してる…。」

そう言って先輩は顔を向け、唇と唇を合わせた。初めてのそれとは違ってとてもしっとりとお互いを求めあった…。






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