裕也が走って行くのが見えた。それは裕也が走って行って間もなくのことだった。
走って行くその横顔に涙が流れているのが見えた。

俺は一瞬どうしようかと戸惑ったがすぐに公園を出て裕也を追いかける。
(ごめんな裕也…。)
走っても裕也に追いつくことはなく、とうとう家まで来てしまった。インターホンを押してみる。すると出てきたのは裕也のお母さんだった。

「あら、良太君。いま裕也呼ぶから待っててね。」

「あ、はい。」

2階に向かって裕也の名を呼ぶ声が聞こえた。それからすぐにおばさんがでてきた。
「裕也何か今機嫌悪いみたい。それでもいいなら勝手に上がっていいわよ。」

「ありがとうございます。じゃあちょっとお邪魔します。」
2階にある裕也の部屋へと階段を上がる。裕也の部屋にあがるのはいつ振りだろうか。
小さい頃はいつも裕也の部屋で遊んでいたけれど、最近は外に出かけることが多くなった。

ドアを開けるとそこに裕也の姿はなかった。と思ったらベッドの上で毛布にくるまっていた。鼻をすする音が聞こえる。
裕也はそのまま何も話さなかった。俺はベッドに腰をかけて裕也の顔を覗いてみる。
その顔は毛布に隠れて見えなかったけれど泣いているのはわかった。

裕也が泣いてる。俺の所為で。俺があんなこと言うから…。ごめんな裕也…。

「裕也…。俺が絶対に守ってやるからな。」
俺の所為だからこんなこと言う資格なんか無いことはわかってる。でも、それでも、、、
・・・

今俺はメールにあった公園に来ている。
そこには先ほど自分が座っていたベンチにあの先輩の姿があった。近づくと気付いたようで立ち上がったが俺の姿を見ると少し残念そうな顔になった。

「裕也じゃなくてすいません。」
そう言うと先輩は俺が2人の関係を知っていたのが信じられなかったのかびっくりしていた。

「全部知ってます。2人のことも竜也のことも…。裕也から聞きました。竜也と抱き合ってたってどういうことですか?」
そう言うと先輩は顔を俯けて黙ってしまった。それでも俺は言葉を続けた。

「俺は裕也に竜也があなたのことが好きだということを伝えました。それでも2人の関係は崩れないと思っていました。あなたは絶対に裕也を悲しませないと…。それなのに…。」
それでも先輩は俯いたまま黙っている。

「何とか言ってください!」

「あれは竜也が一方的に…。竜也のことが好きなわけじゃない…。」

「じゃあ何でそれを裕也に言わないんですか!?」

「言っても悲しませるだけだから…。」
俺は拳にぐっと力を込めた。そして、その拳をそのまま先輩に向けて突き出した。






[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -