この頃裕也の様子がおかしい。その理由はすぐにわかった。
裕也は野球部のある先輩のことを好きになった。あの委員長のことが…。

いつも裕也の話を聞いているといつもあの先輩のことが出てくる。
なにより俺はずっと裕也を見てきた。ずっと…。

俺と裕也は小さい頃からの幼馴染だった。小さい頃から裕也は分かりやすかった。と言うか嘘が下手だった。

どんな小さい嘘でもしゃべる時にたどたどしくなるし目を合わせようとしない。
その反面、自分が嬉しかったことなんかを話すときは顔を紅潮させて饒舌になる。
その癖は今になってもなおっていない。どんなに体が大きくなろうと裕也は子供のように光り輝いていた。

俺とは正反対だった。自慢じゃないが俺は人を見る目がある方だと思う。しかし、それは役に立つ時もあれば邪魔になる時もある。
人を見過ぎてしまうせいで人の違和感がすぐにわかって人を疑ってしまう。そして周りに気を遣いすぎてしまう。

周りを見て自分を見れなかった。自分の気持ちに気付けなかった。自分の気持ちなのに…。

裕也の気持ちに気付いてしまった時と同じくして竜也の気持にも気づいてしまった。
2人ともあの先輩のことが好きだということに。

どうしようかと迷った。俺は裕也とあの先輩が両想いだということも分かっていた。竜也が真剣にあの先輩のことを思っていることも。

そして何より自分が裕也のことを好きだということが…。
その時思った、このままあの先輩と竜也が相思相愛になってしまえば裕也はあの先輩のことを諦めてくれるのではないかと…。そう思ってしまった。

そして俺は伝えてしまった。裕也に竜也の気持ちを、悲しませてしまうことはわかっていたはずなのに…。
そして裕也は走って行った。ずっとずっと見えなくなるまで1度も振り返らずに。
俺は裕也を追いかけることができなかった。

「何やってるんだろ俺…。最悪だ。ごめんな裕也…。」
不意に泣きそうになった。俺は最悪な奴だ。好きな人が悲しむことわかっていたのに、、、

近くの公園に入りベンチに腰をかけた。蛍光灯が切れかかっている。
「裕也、ごめんな。だけど俺…。」

辺りはもう暗くなってセミの鳴く声も聞こえなくなって暗い静寂に包まれていた…。






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