「先輩?」
つい言葉に出してしまった。僕に気付いて竜也と先輩がこちらを振り向いた。
先輩は気まずそうにして僕と目を合わせようとしなかった。
先に口を開いたのは竜也だった。

「裕也。何でここにいるんだ?もう部活終わったんじゃないのか?」

「ちょっと用があったから。それより竜也今何してたの?」

「ちょっと、ノリで…。」

「そっか、ノリか…。竜也はその先輩のことが好きなんだ?」

「だからノリだって。好きとか嫌いとかじゃなくて…。」
竜也は困った顔をして次々と答えていく。手の骨を鳴らしているのを気づかずに…。

「そっか。じゃあまた明日ね。」
僕はそれだけ言うとまた来た道を全力疾走して戻った。

(なんで先輩…。今まで幸せだったのに…。やっと壁を乗り越えたばかりなのに、、、)
自然と涙があふれてくる。家につくと2階にあがり部屋に閉じこもる。
「先輩…。先輩…。」
ベッドに倒れ込むと止めどなく涙が溢れ出して枕を濡らしていく。

「裕也〜!友達が来てるわよ〜。」
下で母が大きな声で呼んでいる。降りたくない。今は誰にも会いたくない。
そして、僕はそれが先輩か竜也だと思ったから尚更会いたくなかった。

階段を上ってくる足音が聞こえる。その足音は部屋の前で止まった。ドアが開けられた。

「裕也。」
そこに立っていたのは意外な人物だった。
その人物は先輩でもなく竜也でもなかった。その人物は良太だった。
僕が黙っていると良太も黙ってベッドに腰をかけた。ベッドが重みでたわむ。
良太は小さくそれでもしっかりと呟いた。
「裕也…。俺が絶対に護ってやるからな…。」






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