今日の部活は良太のことが気になって手に付かなかった。パスミスをして監督に何度も注意された。
先輩にはちょうど休憩が重なったのでその時に帰るとこが出来なくなったことを伝えた。
やっぱり少し残念な顔をしたけど「ちゃんと話を聞いてあげてね。」と言って納得してくれた。

もう、部活は終わってみんな部室で着替えている。良太の様子を窺ってみたがいつものように冷静で落ち着いた感じだった。
さっきとは全然違う雰囲気だった。
このとき初めて良太のことを少しだけわかった気がした。

「おつかれさまでした。」
とうとう最後まで残っていた1つ上の先輩も帰って行った。部室に残っているのは良太と僕だけになった。

「帰ろうか。」
僕がそう言うと良太は少し頷いて荷物を取って立ち上がった。

自転車に乗らずに押しながら話しかける。
「相談ってなに?」

「なぁ。裕也今好きな人いる?」

「うん、いるよ。」

「それってタメ?」

「いいや、年上。」
そう言うと良太は諦めたようにふぅと溜息をついてこう言った。

「裕也が好きな人ってあの野球部の先輩だろ?」

(えっ!?なんでわかったの?)
思わず口に出そうだったがぐっとこらえた。

「なんで?先輩は男じゃん。」

「そうだけど、裕也このごろあの人ばっかり見てるから。」

(僕は周りに違和感を与えるほど先輩のことを見ていたのだろうか。…いや、多分良太だからだろう。)
僕は何と返せばいいのか分からずに良太の顔を見ることができなかった。

「気持ち悪いと思っただろ?男同士なんて…。」

「いや、俺は別にいいと思うけど…。だけど…。」

「だけど何?」

「裕也は気づいてないのか?」

「何を?」

「竜也もあの先輩のこと好きだよ。多分…。」

えっ!?
それは思いもしない告白だった…。





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