あの生徒会室以来、裕也と直接話していない。そう気付いたのは部活中にこちらを見ている裕也の姿に気付いた時からだ。

あの日、竜也と2年のサッカー部の子がいて裕也と一緒に帰ることができなかった。
それからも2人きりになる機会はなかった。2人きりどころか直接話をしていない。いつもメールだ。

そして、今日も裕也はこちらを見ていた。とても遠くを見つめているような視線だった…。
そして、決心した。今日何があっても裕也と2人きりで話そうと。

だが、その願いに思わぬ障害が発生した。部活が長引いたのだ。監督の終りの集合が終わったのはいつもよりも30分も遅くなった。
最終下校時間も過ぎている。当然サッカー部も練習を終えてグラウンドに残っているのは野球部だけだ。

急いで部室へと向かって着替えを始める。他の野球部が他愛のない話をしているのも聞き流して、裕也のことを考える。
(いそがないと、、、)

「先輩、何急いでるんですか?」

不意に後ろから話しかけられる。ふりかえってみると、そこにはがっちりとした体つきの後輩がいた。竜也だ。

「ちょっと人と会う用があるから。」

「そうですか。じゃあ今日は一緒に帰れませんね。」
そう言うとがっかりした様子で数多い部員の中へと隠れて行った。でも、今の貴博にそんなことを考えている用などなかった…。

着替えを終わらせ部室を後にする。学校へは徒歩で通学しているため走って校門へと向かう。
そして、裕也の家の近くの公園へと着くとメールを打つ。
大体の裕也の家の場所は知っているが、「ここだ!」という確証がない。本当は迎えに行きたかったのだけど…。

入口以外に唯一照明があるベンチへと腰を下ろし返事を待つ。

何分待っただろうか、30分以上は待っていると思う。今日は何か用事があったのだろうか。それとも会いたくなかったのだろうか…。

不意に視界がぼやけだした。それを拭おうともせず携帯を見つめる。涙は頬をつたい、地面へと吸い込まれていった。






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