唇を通して先輩の体温が直接伝わってくる。
それはそっと唇を重ねるだけの短いキスだったけど、とても甘く酔ってしまうようなきすだった。
溜まった涙が一筋の線となって頬を流れた。先ほど僕がしたように先輩が手でそっと拭ってくれた。

「裕也はよく泣くなぁ。あの日も泣いてたよな。」

「先輩も今泣きそうになってたからお互い様です!」

「うん、そうだね。」

ドキッとする。先輩は時々感情をストレートにさらっと言う。その時の先輩は幼くも、大人びた何とも言えない表情になる。
飾っていない本当に無防備な先輩の表情は僕を虜にした。偽りの無い純粋な言葉は僕の心を安らかにした。
先輩の行動のすべてが、僕が先輩のことを好きだということを確信させた。
(先輩…。)

そして、望んでいたものが手に入った。先輩と話す他愛のないこと。先輩と過ごす時間。2人だけの時間が、、、

「先輩、背高くなったね。僕よりも少し高くなってる。」

「そうかな?成長期かな?」
先輩は嬉しそうに手で僕の背と自分の背を比べながら言った。

先輩は本当に背が高くなった。あの日、生徒会室で抱かれたときは僕よりも低かったのに、今では僕よりも少し高くなっている。
前よりもよりいっそう、たくましくなり頼もしくなった。

僕は、背が高くなったと言われて嬉しそうな先輩を見ながら、微笑んでいた。たくましくなってもこんなところは弟を見ているようだ。

そんな僕に気がついたのか先輩は恥ずかしそうに笑って鼻の頭を掻いた。
そして、また先輩はこう言った「ありがとう」と。






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