僕は自分の気持ちを伝えるとその場に俯いて立っていた。
先輩はベンチから立ち上がると僕の方へ歩み寄ってきた。そのまま先輩の腕が背中にまわってきた。
腕には力がこもっていて僕の体は先輩の体へと押しあてられた。あの日のように先輩に身を預ける。
手が頭に乗る。でもその手はあの日のように撫でるわけではなく僕の頭をしっかりと抱き抱えていた。

ずっと、ずっと、これを求めていた。先輩を。この時間を…。
先輩の背中に腕をまわして先輩にくっ付く。
先輩の匂い。先輩の体温。先輩の感触。先輩の心臓の鼓動。先輩の息遣い。先輩のすべてが感じられるようだった。

しばらくして、頭を抱く手の力が弱くなった。先輩の顔を見上げる。先輩の瞳にはわずかに涙が溜まっていた。
僕は体勢を直し先輩と顔を向き合わせる。手をあげて先輩の瞳に溜まった涙を拭き取る。
先輩は恥ずかしかったのかハニカミながら袖で溜まっていた涙を拭った。そして、小さな子をなだめるように言った。
「俺も好きだよ。」
その言葉は優しさと愛情に満ちていた。

僕は何だか恥ずかしくなってまた先輩の胸に顔を押し付ける。それでも先輩は言葉を続けた。
「好きだよ。今までも、この先も君を、裕也を想い続けるよ。」

不意に泣きそうになった。瞳に溜まった涙が流れないように顔を上にむける。そこには先輩の顔があった。

(あぁ、僕はこの人を好きになった。そして、この人も好きでいてくれる。いままで、遠くで見つめることしかできなかったのに。
憧れだけで追いかけてきたのに。今その憧れは愛という感情に変わっている。)

先輩の顔に手をそっとそえる。野球をやっているとは思えないほど綺麗な肌だ。
その手を先輩の頬を滑らせそのまま後頭部へと手をまわす。

先輩も僕が何をしたいのか悟ったのか、目をつぶった。

先輩の顔をひきよせて自分の顔も近付ける。そして、唇と唇をそっと重ねた。





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