「塩田君本当に信じていいんだよね?」

「ああ。何でも話してくれよ。」

塩田君は抱いている手の力を緩めて僕の顔を見つめた。
それは涙が溜まっていてもしっかりと力強く僕の存在を見つめてくれていた。
その強い目を見ていると意思とは反して僕の瞳から涙があふれ出してきた。

もう慣れていたはずなのに。もう枯れ果てていたはずなのに涙が出てくる。

「大丈夫、これからは俺が護ってやるからな。何でも話してみろ。」

「怖かった…っ。ずっと…っ。辛かった。」
涙が溢れてきて思うように声が出ない。塩田君はそんな僕の背中をさすって何度も「大丈夫」と力強く囁いてくれた。

「塩田君。僕…わかんないよ…。どうしたらいいのかわかんないよ。」

「大丈夫だから。話してみろよ、そのアザどうしたんだよ?いじめられてたのか?」

「そんなんじゃない…。これは…。」
いざとなると言葉につまる。このまま塩田君に話していいのだろうか。
そもそも塩田君に話したからと言って何かが解決するのだろうか。

頭の中では現実的に考えればどうにもならないこと位わかっていた。

それでも理屈は抜きにして僕は塩田君を求めていた。僕を1つの大切な存在だと思ってくれている塩田君を…。

「これは、、、お父さんから殴られてできたアザなんだ。」

そう言うと塩田君は目を見開いて再び僕の体中にできたアザを見つめた。
そして頬にできたアザを優しくなでるとまた僕を抱きしめてくれた。

「親が子供に手を挙げるなんてどうかしてる。

ごめんな将、気付いてやれなくて…。ごめんな…。」

塩田君の瞳からは涙が流れ出ていた。思わずそれが冷たくて体がびくっとなった。

「あっ!ごめんな湯冷めしちゃったな。もう一回入り直そうか。俺もまだ入ってないし。」

塩田君は涙を拭うと僕の体をひょいと抱きかかえて湯船に入れた。次いで塩田君も入ってくる。
そして後ろから抱きつくと耳元でそっと囁いた。

「話してくれてありがとうな。」








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