脱衣所で服を脱ぐ。その姿が鏡に映っていた。




…汚い。



そう思った。

鏡に映ったその体には頬と同じようなアザが浮き出ていた。

背中、肩、腹、顔、体中いたる所に青アザができていた。

今まで父から受け続けた暴力は体中に刻まれている。治っても治ってもその上から刻まれる。不意に父の顔が頭をよぎった。背中に寒気がはしる。
浴室に入りお湯を頭から被る。それでも父の顔は頭から張り付いたままだ。
湯船に浸かって体を温める。ここまで来て父が僕を縛り付ける。暗闇の中に引きずり込もうとする。

湯船に潜って振り払おうとする。その時、脱衣所の方に人の気配を感じた。

「将、入るからな。」
ドアを開けて裸の塩田君が入ってきた。
「何で…、僕もう上がる。」

「まぁそんなこと言うなって!
だって将、一緒に入ろうっていってもどうせ断るだろ?
だから…。」

その時、塩田君の目線が僕の体にそそがれた。

「将、何だよその体…。」
僕は急いで湯船からでて塩田君の横を通って脱衣所に行こうとした。だがそれは塩田君によって阻まれた。

「将、何なんだよその体。アザだらけじゃないか。どうしたんだ…」

「何でもない。」

塩田君が言い終わらないうちに手を振り払って浴室を出ようとする。しかし、後から手が回ってきて僕を抱き寄せた。そして耳元で溢れる気持ちを抑えるように言った。

「だから嘘つくなよ。俺だけには嘘つかないでくれよ…。将を護ってやりたいんだよ。」

裸と裸で肌が密着する。服越しと比べモノにならないほど体温が感じられ、心臓の鼓動も手に取るようにわかる。

「話してくれよ。将…。どうしたんだよ?」

僕は人を裏切らないように、傷つけないように自分を隠してきた。だけどこの人は今傷ついている。
僕が僕を隠していることで涙を流している。僕を知ろうとしてくれている。必要としている。もう決心するしかない。
そう思うと不意に涙が溢れそうになった。








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