「そんな事じゃない…。」
塩田君は叫んだあと呟くようにそう言った。

「原野は嘘ついてるだろ。いつも、、、」

「急にどうしたの?嘘なんかついてないよ。怪我なんかしてないし、本当に大丈夫だよ。」

「だから、そんな事じゃないって言ってるだろ!原野はいつも『大丈夫』って言って嘘ついてる。」

塩田君は歯を食いしばりながら悲しそうに言った。

「原野はいつも嘘ついてる。あの日だって、剣道辞めるって言った時も大丈夫って嘘ついた。」
確かに剣道を辞める時に塩田君に話しかけられた。その時にそんなことを言った気がする。
でも、「大丈夫?」って聞かれたから「大丈夫。」と応えただけだ。
そんな僕の気持ちを読み取ったのか塩田君は話を続けた。

「原野はただ応えただけかもしれないけど、その応えは嘘だった。原野辛そうだった。」

その時諦めた。あぁ、塩田君には仮面が通じない。

「塩田君はなにもわかってない…。」
笑顔の仮面が崩れていく。何も感じていないような無表情になっていく。
「塩田君はなにもわかってないんだよ。僕はいつも僕を隠してきた。他人に本当の僕なんて見せたくない。」

「わかってないって原野がそうやって隠してきたから分からないんだろ!自分が嫌いだからって、、、」

塩田君が言い終わらないうちに僕は話をはじめた。

「やっぱり塩田君はわかってないよ。」
僕は少し呆れたように小さく呟いた。

「僕は自分が嫌いで自分が嫌いになったわけじゃない。そうなるしかなかった。

自分を嫌って、自分は周りと違うんだと思うしかなかった。人にできるだけ深く関わらないように。
自分の中の汚い部分を隠すために。

人を信じられなくなったから、、、」

「何言ってるかわかんねぇ!原野は1度も人を信じたことがないのかよ。」

「そんなことない!1度くらい信じたことある。信じた時の心地よさも知ってる。でも、、、それを裏切られた時のつらさも知ってるから…。」

塩田君はその言葉を聞くと僕の方へ歩み寄ってきた…。







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