(塩田君…。)
暗闇の中にいたのは塩田君だった。でも、机に突っ伏したまま動かない。
しかも、なぜかその机は塩田君自身の机ではなく、僕の机だった。

近づいてみると塩田君は寝ていた。その口が微妙に開いている寝顔はとても幼く可愛く見えた。

とても、この顔で相手と1対1で真剣勝負をしていると思えないほどに。

「塩田君。塩田君!」
体を揺さぶってみる。すると塩田君は体を起こし何が起こったか分からないような寝ぼけ眼でボーとしていた。

少しして意識がはっきりしてきたのか、僕に気付いて椅子から立ち上がった。

「ごめん、いつの間にか寝てた!」

「うん、別にいいけど、部活は?」

前にも言った通り剣道部にそうそう休みがある筈がない。それなのに何故この人物はここにいる?

「部活は、、、今日はちょっと病院にいくから休むって言ってきた。」

「病院って、どこか怪我でもしたの?」

「ちょっと膝を痛めてね。ていうか保健室に行ってなかったろ?」

「っ!なんでわかったの?」

「なんでって、保健室に行ったけど居なかったから。」

保健室に行った?何のために?

「何か保健室に用があったの?」

「用って言うか原野の迎えに行こうかなと思って。」

「えっ!」
思わず声が出てしまった。意味が分からない。病院に行かなくてはいけなかったのではないのか。

なぜここで僕を待つ必要がある?ふと塩田君の足元を見ると僕の荷物が整理されていた。
HRの途中で抜け出したから帰る準備してなかったはずなのに。

「一緒に帰ろうぜ。」

塩田君は眠そうな目を擦りながら当たり前のようにそう言った…。







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