教室の鍵を閉めて職員室に返し、昇降口へと向かう。もう、外は日が西に傾いて闇が迫っていた。
靴をはき、朝とは違う喧騒を聞きながら学校を後にする。
足が重い。頭痛がする。息苦しい。1歩1歩がたまらなく負担に感じる。

いつものことだが家には“あれ”が待っている。そしてその時いつも実感する。僕は存在してはいけないのだと。必要ないのだと。
曲がりくねった道を一人寂しく歩く。あの場所が見えてきた。暗闇が満ちたあの場所が…。

玄関へと入り靴を脱ぐ。足音をたてないように、ゆっくりと2階の自分の部屋へと向かう。
だが、ここにいても“あれ”はやってきた。階段を上がってくる足音が聞こえてきた、、、ドアが乱暴に開けられる。

入ってきた人物は大きな男だった。父親だ。背が高い父親の顔を見上げる。すると突然頬に強い衝撃がはしった。
殴られたということに気付くまでに時間はかからなかった。いつものことだから、、、

「飯速く作れ!」
父はそれだけ言うと僕の腕を引っ張った。頬に痛みを感じながらも必死に手を振り払おうとするが、大人の力に勝てるはずがない。

引きずられながら何とか立ち上がる。そして腕を引っ張られながら1階のキッチンへと連れてこられる。

「作り終わったら呼びに来い。」
そう言うと父は自室へと戻って行った。ドアが閉まる音が聞こえた。

冷蔵庫のものを使って調理を始める。まだ頬に痛みが残っている。

涙は出ない。

もう慣れてしまったから、、、

もう諦めてしまったから、、、




自分はこういう運命なのだと。

人に愛されることがないのだろうと…。

そんな曇りきった気持ちとは裏腹に手は無駄なく的確に動いてみるみるうちに料理が完成していく。痛みと共に教え込まれたから。

出来た料理を皿へと盛り付けていく。全ての準備を終えて父を呼びに行く。
ドアをノックして「できました」と声をかける。中からの返事はない。
しばらくしてドアが開いた。中から父が出てくる。僕には眼もくれず椅子に座って料理を食べ始める。

「お茶」「醤油」など父が要求した物をとる。そうしているうちに父は全ての料理を平らげた。そして一言「まずい」と言うと僕の方へ寄ってきた。

父は腕に力を入れ、拳を作った。とっさに目をつぶる。腹部に強烈な痛みが突き抜けた。次はみぞおちを殴られたのだ。
たまらずにその場に崩れ落ちる。そんな僕を父はゴミを見るかのような冷たい目で見降ろしていた。
そしてまた自室へと戻って行った。ドアの向こうは一層暗く見えた…。








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