「この服とこの服どっちがいいかな?」
「うーん、純ならこっちの方がいいんじゃね?」
あぁ、今俺幸せだ。何か二人きりで買い物ってデートみたいだ。なんかちょっとだけ緊張する…。
亮には悪いけど、二人きりという状況が考えられないほど幸せだ。
「なぁ純。そろそろカラオケ行こうぜ。」
「分かった。じゃあ行こうか。」
―――
店に着くと竜はすぐに曲を入れ始めた。これまで何度か竜と一緒にカラオケに来たことあるけど、竜は歌が上手い。
そして、歌っている横顔もすごくかっこいいんだ。俺がずっと見つめているなんて竜は気付いていないけれど…。
それから何曲歌っただろうか、時間を知らせる電話が鳴って俺たちは店を後にした。
「あー腹減ったな。何か食べようぜ。」
「竜は何が良い?俺、なんでもいいけど…。」
「いや、俺もなんでもいい。純が好きなもの選べよ。」
そう言いながら竜は自分の財布の中身を覗き込んでから「出来るだけ安いやつで」と付け加えた。
結局俺たちはファミレスに入って安っぽい定食を食べた。率直な感想は可もなく不可もなくといった感じだった。つまりは微妙。
「…今度は違う店に行こうな。」
食べ終わった竜はコップに注がれた水を飲み干してそう言った。俺は苦笑いで応えた。
「次どこ行く?」
「俺、もう金ないからな…。適当にぶらぶらするか。」
「じゃあさ、さっき見つけた店に行っていい?」
「別にいいけど。」
さっき見たんだ。小さな雑貨屋にブレスレットがあったのを。
竜はいつも腕につけていた。中学のころからずっと。それは中学二年になったときに全員に配られた名前入りのミサンガだ。亮も持っているはずだ。俺も持っているには持っている。
野球を止めた時にはずしてしまったけれど…。
だけど、竜は未だに腕に付けている。竜の腕に着いているそれはもう、少し黒ずんでいてぼろぼろになっている。
だから、、、俺から新しいのをプレゼントしようと思ったんだ。本当は手作りでミサンガを作ろうかと思ったけど、試みた結果大量の糸がごみとして残っただけになった。
だから、この機会に…出来ればおそろいのものを買いたかったんだ。ちっぽけなつながりでも、、、それでもよかったんだ。
[戻る]