「なぁ、竜。亮来れなくなったって。」

「はっ!?」

竜が横から俺の携帯を覗き込んでくる。そこには変わらない文面が映し出されている。

「なんだよそれ。じゃあ結局俺と純の二人しか居ないじゃん。」

「どうする?誰か他に誘う?」

竜に聞いてみる。

本当はそんな気はなかった。出来ることなら二人きりで買い物とか行ってみたい。考えてみると今まで二人きりで買い物なんてしたこと無かった。
中学の頃は他の野球部が常にいたし、高校になってからは遊ぶこと自体無くなっていた。

「うーん、今から呼んでもなぁ。もう二人で行こうか、面倒だし。」

「うん!じゃあもう行こう。」

そう言って二人は切符を買って電車に乗り込んだ。

―――

これでよかったんだ。

亮は駅前のファーストフード店で二人の姿を見送った。強く握った携帯の画面は「送信しました」という画面のままになっている。

最初は本当に三人で行くつもりだった。だけど、そんな必要ないと思った。

早く着いた俺は時間をつぶすためにこの店に入った。暫くして純は時間通りに来た。…隣に竜を連れて。

綺麗に笑っていた。俺の大好きな笑顔があった。予想と違ったのはそれが竜の隣にあるっていうこと…。

これは俺のしたことの結果。そんなことは分かっているけど、、、、思い通りになることが嫌だった。

こんなことは思い通りになるのに…そう思った。

駅前にはもう二人の姿はない。俺の携帯に返信もない。俺は要らなかったっていうことだ。

『頑張ればなんでもできる。』
テレビに出ていた人が言った。周りの人は称賛の拍手を贈った。

俺はそれを冷めた目で見ていた。

『頑張ればなんでもできる。』そんな訳ないだろ…。そうだったら今純の隣に居るのは俺だった。

一度だけ本気で、、、真剣に純に告白したことがある。
『好きだ。』そんな短い言葉に俺のすべての気持ちを乗せて…。

だけど、純が笑いながら答えた。

「分かったって。しつこいよ。…俺も、冗談でも竜にそう言えたらな…。」

違うのに。俺、冗談じゃないのに。俺の本気は純にとって冗談にしかならなかった…。

大好きな人には大好きな人がいたんだ。

目の前のポテトを鷲掴みにして口に放り込んだ。いつもよりしょっぱい気がした…。



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