朝、インターホンが鳴ると俺はすぐに玄関へと向かった。

「おはよう。」

そこには竜が立っていた。どんな格好をしてもかっこいいけど、やっぱり私服姿はすごくかっこいい。

「もう準備できた?」

「うん。もう準備できてる。」

今日は竜が家に迎えに来て、それから駅に行く予定だ。亮は俺たちの家とは逆方向だから直接駅に集合ということにした。

「竜くん、久しぶりね。ずいぶん大きくなってますます男前になったわね。」

出てきた母さんが笑いながら言う。竜も照れながら頭を掻いている。

「久しぶりです。」

本当にその通りだった。中学の頃はよく遊びに来ていた。だけど、俺が野球を辞めてからはすっかり来なくなっていた。

「もう行こう、竜。」

竜を引っ張って外に出た。

「じゃあ、母さんたちも、もう少ししたら出るから。一応鍵は持って行ってね。」

「分かってる。じゃあ行ってきます。」

ドアを勢いよく閉めて二人で歩きだした。外はとてもいい天気だ。雲ひとつない真っ青な空が広がっている。
暖かな日差しの下、少しだけ冷たく感じる爽やかな風が吹き抜ける。

少しだけ寒いけど、手袋は付けてこなかった。

別に恋人同士みたいに手を繋ごうとかそんなことを期待していたんじゃない。ただちょっと、ちょっと触れる程度でいいから、掠る程度でいいから、とにかく偶然だってなんでもいいから竜の温もりを肌で感じたかったんだ。

隣にはしっかりとポケットの中に手を突っ込んでいる竜が歩いていた。

「ちょっと寒いね…。」

そう言って俺もポケットに手を突っ込んだ。竜は気にせず前ばかりを見ている。俺はちょっとだけ笑った…。

駅に着くまで俺たちはずっと話していた。この前までの気まずさが嘘だったように他愛のない話で笑いあった。駅に着くのはあっと言う間だった。

時間を確認する。ちょうど約束の時間だけど、亮の姿はなかった。

「あいつは時間にルーズだからな。」

竜が当たり前みたいにそう呟いた。

「…そうかな?…あっ、メール来た。亮からだ。」

メールを開いてみる。そこには簡潔にこう書かれていた。

『ごめん。今日用事で行けなくなった。二人で行ってきて。』



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