「純、今度一緒に遊びに行こうぜ。」
「え?今度の日曜?俺、用事あるんだけど。」
その瞬間俺の頭の中の完璧な計画は倒壊工事を始めた。どんどんひびが入っていく。
予想外だった。というより予想しておくべきだった。俺たちだけで話を進めていたけど、この計画には絶対的に必要なものがある。
純の暇だ。
どうやら俺の天才的な頭脳は上手く作動しなかったようだ。と言っても上手く作動したことなんて数えるほどしかないんだけど…。出来ればその数回の確率が今回来て欲しかった。
「午後からとか無理?」
「朝から一日中家族と出かけるつもりだけど、、、」
「それって抜けられないよな…?」
「別に大した用じゃないと思うけど、、、急だからなぁ…。」
「だよなぁ…。」
早くも俺は挫折しそうだ。やっぱり俺の頭脳は天才的なものと紙一重違った絶望的なものだったみたいだ。簡単にいうと「すごく残念な馬鹿」だった。
でも、そんなどうしようもない頭でも一つだけ思いついた言葉があった。出来れば言いたくのない言葉だったけど仕方がない。
「竜も来るんだけど…。」
そう言うとぴくりと純が反応した。
「小山は友達と遊ぶらしくて竜も誘ったんだ。他の野球部は捉まらなかったから俺と竜しかいなくて暇なんだよ。」
「…だったら行く。親に適当に理由つけてみる。…本当に小山さんいないんだよね?」
「居ないって。俺は馬鹿だけど、純には嘘つかない。」
「わかった。絶対行く。」
そう言うと純はすこし楽しそうに竜の方を見た。竜もこちらのことが気になっていたのか、こちらを見ていた。少しの間視線が重なる。
視線が外れた後純はこちらに向き直って言った。
「どこ行こうか。俺、どこでもいいよ。」
「決まったら連絡する。多分映画とかカラオケになると思う。」
「わかった。…亮…、誘ってくれてありがと。」
…ほらな。純は竜がいたら来るんだ。竜のことが大好きだから。こんな確実な方法考え出すなんてやっぱり俺馬鹿じゃないだろ?
俺、こんなにも純の気持ち分かっているんだ。俺、こんなにも純を幸せにしてやろうと思っているんだ。
なのに、なぜこんなにも純は竜に一直線なんだろう。俺には分からない。いや、分かりたくない。
「当然だろ。」
それだけ言って俺は笑った。多分俺の一生のうちで一番スカした笑顔。そんな笑顔しかできなかった。
それでも純は笑っていた。
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