着替えを早々に終わらせて俺は竜と一緒に部室を出た。部活用のエナメルバッグがやけに肩に食い込む気がして痛い。

「で、どうしたんだよ。俺に相談なんて珍しいじゃん。」

「いや…同じ中学で仲良いのって純以外はお前くらいだからさ。」

「純以外って言ったら、俺しかいないだろ。あっ、二組にあいつがいたな。名前は…」

「そんなことどうでもいいだろ。なぁ、亮。相談に乗ってくれるか…?」

「ここまで来て乗らないって言う奴はいないだろ、普通。なんだよ?」

「いや、なんか最近さ、純が俺のこと避けてる気がしてさ。…ちょうど、お前に傘貸してもらった次の日ぐらいからなんだけどさ…俺、何か悪いことしたかなぁって。」

「…知らねえ。」

ぼそりとそれだけ答えた。さっきまでの真っ赤な夕日は跡形もなく沈んで深い群青が空を侵していた。

俺の嫌いな色だった。

「そうか…亮なら何か分かるかと思ったんだけどなぁ。純、お前の前じゃよく笑ってるから。」

「……」

知らない癖にそんなこと言うなよ。

俺に見せる笑顔よりお前に見せる笑顔の方がずっと綺麗で明るくて真っ直ぐなんだ。
俺には絶対に見せてくれない笑顔をお前は見ることが出来るんだ。

この意味がお前に分かるのか?

「なんかさ、結構へこむんだ。純とはずっと一緒だったから友達っていうか、、、幼なじみっていうか、、、家族っていうか…。何か特別な存在なんだよな。」

竜は少し照れ笑いをしながらそう言った。

「それ、純に言ってやれよ。そしたら純の機嫌も直るかもしれないぞ。」

「まじ?でも本人を前にすると恥ずかしくてそんなこと言えないよなぁ…。」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。今度の休みに買い物とか映画とか誘ってみればいいじゃないか。」

「でもなぁ。もしかしたら遥がどこか行こうとか言いだすかもしれないし…。」

いま自分の肩にかかっている重いバッグで殴りつけてやりたかった。
なんで純は俺じゃなくて竜の方がいいんだ。
なんで俺の言葉は冗談としか受け止められないのに、竜の仕草で真剣に悩むんだ。

俺の方が純のこと…好きなのに…。



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