覗いちゃいました



俺たち(あ、いつものメンバーな)は他より運動が出来るからと、球技大会の練習をあまりしないで放課後グダグダと居残っていた。
ほら、球技大会準備及び開催期間中は部活動しちゃだめってなってるだろう?
だから、ハチや兵助も一緒にくっちゃべっていたんだよ。

まあ、俺たちが集まって話すと、たいてい長話になるから、帰る時間は7:00過ぎが普通だった。
部活動がないからか、校内にも校庭にも人っ子1人いなかった。
静かな校舎を、俺たちが最後かぁ〜なんて、下らない事を喋りながら出た。
俺たちのうちの何人かはチャリ通だから、みんなでチャリ置き場へ向かった。そしたら、体育館の方に明かりが見えたんだよ。

「なあ、行ってみないか?」

俺の問いに対するみんなの答えは、勿論イエスだった。こんな時間まで居るのはどんなヤツか。こんな時間に何やってんだろうか。
興味本位で俺らは覗いたワケだ。
そしたら……そこには、体育館の中には女子生徒が1人、息を乱しながら膝をついていた。

「あ!あいつ」

「何だハチ、知り合いなのか?」

「確かソフトテニス部の苗字だったかな……たまにトレーニングルームで会うんだ」

兵助とハチの会話にふーんと相づちをうつ。再び、視線を彼女に戻してみれば、彼女は無数に転がったバスケットボールの1つを拾い上げた。

「偉いね、こんな時間になるまで練習だなんて」

「しかし、雷蔵。1人だけ上達しても球技大会では勝てないぞ?」

「え、あ……う〜ん、そうだけど」

ダンダンとボールをつく音。乱れた呼吸。シューズと体育館の床が擦り合う音。
一生懸命やっているのは分かるが、たった1人で練習だなんてバカげている。それが俺の感想だった。
雷蔵は感心し、ハチ・兵助は大変だなぁと……どちらかと言えば、同情に近いような目を向けていた。
そこまで把握してから、ふと気が付いた。約1名、さっきから一言も喋っていない。

「おい、勘右衛門は…っ!?」

振り返ってみれば、スクバを肩からだらしなく刷り下げた(正しく言うなら落としそうな)勘右衛門が突っ立っていた。
頬が赤く染まり、目は心なしか潤んでいる。今まで見たことのない勘右衛門も表情に俺は思わず、後退りをした。

「いってぇ!三郎押すな……あ?」

どうやら下がりすぎてハチにぶつかったらしい。ハチは俺を怒るつもりで振り向いたのだろう。しかし、俺同様、見たことのない親友の姿に言葉を失ったのだ。
ハチと俺の様子からおかしいと感じた雷蔵と兵助も勘右衛門の方を見た。
俺たちからの視線を気にせず、勘右衛門は体育館の中をただじーっと見つめていた。

「どーなってるんだよ、勘ちゃん顔が真っ赤っかなんだけど」

「う〜ん、兵助はこんな勘ちゃん見たことある?」

「ない。てか、これはさ……」

ちらりと俺を見てきた兵助。おそらく思ってることは同じだろう。小さく首を縦に振る。兵助はそれを確認すると、2人に対してボリュームを抑えて言った。

「おそらく……勘ちゃんはあの子に一目惚れしたんじゃないか?」

「「……勘ちゃんが一目惚れぇえ!!!!」」

「っち!バカ!!」

咄嗟に口を塞ごうとしたが間に合わず、2人の大声が響き渡った。勘右衛門もそれで正気を取り戻したらしく、さっきよりも頬を紅潮させながら叫んだ。

「ち、違うからっ!とりあえず、逃げるよ!!」

確かに覗いてたのがバレるのはマズい。チャリ置き場に向けて全力疾走していく勘ちゃんをハチ、兵助、雷蔵が順に追いかける。
俺は最後に体育館の中を覗いた、肝心の苗字はこちらに見向きもせず、ゴールに向かっていた。
バレる心配はなさそうだな。そう確信してから、俺は雷蔵の背中を追った。




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