聞き出しました



「勘右衛門が『名前に惚れた理由』?それなら知っているよ」

「さ、三郎っ!」

「雷蔵は黙っててくれないか?名前は私を頼って来たんだぞ」

「……僕、知らないよ?」

「問題ないさ。さて、本題に入るとしようか」

「は、はあ……」

目の前で対照的な表情を浮かべる同じ顔。
尾浜くんと付き合うようになってから知り合った『不破雷蔵』くんと『鉢屋三郎』くんだ。
2人は双子や兄弟ではなく、れっきとした従兄弟だ。顔が似ているのは、片親が一卵性双生児だったからと三郎くんが言っていた。

さて、本日、この様なことになったのには理由というか、原因がございます。

一昨日、実は私と尾浜くんの1ヶ月記念日でした。2人でお祝いをしようという事で、我が家にてお家デートをしました。
「わざわざ外に出かけるより、2人っきりってのが良いよね」なんて言う尾浜くんの発言により決まり、尾浜くんを気に入ってる母の策略で我が家で2人っきりの時間を過ごしてました。

「ねえ、名前」

私を後ろから抱き締めながら尾浜くんが耳元で言ってきました。よくやられることなのですが、未だに慣れず、私は頬を染めながら返事をしました。

「なに、尾浜くん?」

「その尾浜くんってやめない?なんか、俺だけ苗字呼びで寂しい」

一切間を入れずに言ってきた尾浜くんは、苗字呼びがそんなに嫌だったのか、ぎゅうぅっと強めに抱き締めてきます。
確かに私はずっと彼を苗字で呼んでいました。せっかく彼が言ってくれた我が儘ですから、きいてあげようと思いましたが、私も彼にどうしても教えて欲しいことがあったので、こう答えました。

「じゃあ、代わりに私を好きになったキッカケを教えて?」

そこから先は皆さんのご想像にお任せ致します。
まあ、簡単に言えば、お互い譲れず、交際後初となるケンカにまで発展しました。
そして、尾浜くんはおそらく話す気がないので、彼と仲良しで同じ委員会の三郎くんを頼ってきたのです。
(雷蔵くんはたまたま三郎くんと一緒に教室にいました)

「勘右衛門のお前に惚れた理由なら、私だけでなく八左ヱ門や兵助、雷蔵も耳にタコができるぐらい聞かされたさ」

若干、懐かしむ表情を浮かべる三郎くん。哀愁が漂うその表情を見る限り、本当にしつこく聞かされたのだろう。いくら知り合う前のこととは言え、何だか申し訳なくなってきた。
その感情を表に出したつもりはなかったのだが、三郎くんはそれを察し、私の前まで来ると力任せに私の頭を撫でくり回した。地味に痛いのだが。

「そういう顔させたくて言ったんじゃないからな。なんて言うか……」

「そんぐらい愛されてるって言いたかったんだよね、三郎は」

「まあ、雷蔵の言うとおりという訳だ。だから、この話聞いたら、さっさと謝って来いよ?」

雷蔵くんのフォローもとい爆弾発言により、顔面に熱が集まるのを感じながら、私は勢いよく頷いた。
それを確認すると、三郎くんは席に戻り、頬杖をつきながら語り出したのだった。

「あれはそう……一年前の球技大会がキッカケだった」




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