あの後、お兄さん方のライブが終わり、無事に入学式は幕を閉じた。
教室に戻ると、市ちゃんが入学式でのことを軽く説明をしてくれた。
なんでも、この学園にはイケメンで人気の高い生徒が7人いて、その人気は芸能科にいる生徒よりも高く、桁違いらしい。
そのうちの1人が最初に悲鳴を巻き起こした生徒会長こと、『毛利元就』。
クールなところが魅力らしい。
(あれは、クールっていうより冷酷なだけじゃ……)
所属科は、商業科。ちなみに、学年トップ。
そして、その次が銀髪に左目の眼帯がトレードマーク、『長曾我部元親』。
頼れる兄貴で、芸能科所属。
最後が黒髪に右目の眼帯がトレードマーク、『伊達政宗』。
芸能科所属の新入生。
彼は長曾我部元親と共に、『O.E.』というアイドル……とはまた違うが、そういう感じのユニット?を組んでるらしい。
ちなみに、O.E.は芸能科トップで、海外活動も行っている人気沸騰中のグループだそうだ。
(私はそういうのに疎いので、知らなかった)
何はともあれ、彼らをはじめとする7人とは極力関わらない方が身のためだと教えてくれた。
あと、イベント毎に彼らの中から誰かが必ずステージに上がるから、耳栓があった方が良いかも、と耳をさすりながら教えてくれた。
確かに、耳を押さえていたはずなのに痛いのは何でだ?
「そういえば、名前ちゃん、これからどうする?」
ホームルームが終わり、担任の先生が教室から去ると、市ちゃんが声をかけてきた。
1年生が今日中にやるべき事はすべて終わったし、これといった予定もな…………あった。
「私、一回寮に行かなきゃ。入寮式あるんだよね」
「っ!そっか……分かった」
しょぼーんと、眉根を下げる市ちゃん。なんか申し訳ないなぁ。
「そのうち、ショッピングモールとか行こうね」
「……うん。市、嬉しい」
そう言うと市ちゃんの表情は悲しげなモノから幾分明るくなった。優しい笑顔に心が癒される。
「んじゃ、また明日〜」
「バイバイ…………」
手を振り返してくれる市ちゃんを背に、教室を飛び出す。
こっから寮までは歩いて5分らしいので、迷いさえしなければ、入寮式には余裕で間に合う。
私は人にぶつからない程度に走り、寮へと向かった。
「苗字名前ちゃん……」
初めて出来たお友達。市、嬉しい。
携帯のアドレス帳に刻まれた女の子の名前を見て、微笑む。
外部生だから市のコト知らないのだろうけど、きっと名前ちゃんなら……市のコト知っても仲良くしてくれる気がする。
手に持っていた携帯をポチリポチリと押して、あの方に連絡を取る。
「…………長政さま、市、お話があるの」
きっと長政さまも喜んでくれる。
私に出来た、私自身を受け入れてくれた初めての友人に。