「ヒマだね」
「いつも、こうだから……」
「そういえば、市ちゃんっていつから学園いるの?」
「…………幼稚舎から」
「へぇ」
耳に入ってくるPTA会長だかの挨拶をBGMに、市ちゃんとの会話を進める。
あれから教室に向かうと、なんと、私たちは同じクラスだったのだ!!
互いにそれを喜び合い、適当に席について話をしていたら、いつの間にか入学式の時間になり、今はその真っ只中というワケです。
それにしても、教室にいた時から感じてたんだけど、変な視線が刺さってるような気がする。
初めは市ちゃんが綺麗だからみんな見てるのかな、と思ってたけれど、その視線は市ちゃんじゃなくて私に向けられているのに気付いた。
入学式に出る前にトイレに向かい、おかしなところがないかチェックしたが、特になかった。
理由も分からず、チラチラ見られんのはイヤだなぁ。
「そろそろ、耳おさえた方が良いよ」
「え?なん」
で、という一言が出る前に市ちゃんが素早く両手を耳に当てたので、私も真似をした。
その次の瞬間、事件は起きた。
「「「キャーッ!!!!」」」
甲高い女子特有の黄色い声が講堂内に反響する。なにが起きたんだ?
疑問に思い、壇上を見ると、鮮やかなライトグリーンのネクタイをした茶髪のお兄さんがいた。
「静かにせんか、捨て駒が」
「「「キャアアア!!」」」
え?おい、待て女子。今、明らかにバカにされたよね?なのに、なぜ悲鳴をあげる。
びっくりしながらも壇上を見つめてると、そのお兄さんはマイクを取り、演説を始めた。
時々、悲鳴という名のノイズが入り聞き取りづらかったが、どうやら彼は生徒会長らしい。
「……まだ続くから離しちゃダメ」
彼の長ったらしい演説が終わり、安心して手を下げようとしたら、市ちゃんの声が耳に入った。
鼓膜を破るような自殺行為はしたくない。
その一心で、再び手をあげると、すぐにまた悲鳴が響き渡った。
もう、なんなんだよ。この学園は。
若干イラつきながら、壇上を再度見やれば、スポットライトを浴びた銀髪のお兄さんがいた。
え、不良!?
「「「アニキィィイ!!」」」
「「「元親ぁああ!!!」」」
なんだ、これ。
不良っぽい集団とアダルトなお姉さま(本当に高校生か疑いたくなるような人達)から歓声が上がった。
呆然とステージと化した壇上を見つめると、お兄さんは新入生の集団のある一点を指差し、高らかに言った。
「ヤロー共。今日は待ちに待った入学式だ。精一杯楽しんでけよ」
「「「うぉおおお!!!」」」
「そして、何より……今日は俺の相方、蒼き竜こと伊達政宗の入学式だぜェ!!」
「「「筆頭ぉおお!!!」」」
「「「政宗ぇえええ!!」」」
ピンスポが新入生集団の中の1人に当たる。
その人物は席を立つと、ジャケットを脱ぎ捨てて、跳んだ。
私の目の錯覚でなければ、彼のいた位置からステージまで10メートルはあったのに、助走もつけずに華麗に跳んだ。おまけに、陸上選手並みに綺麗に着地した。
え、あの人、人間ですか?
「Hey,guys!Hey,cats!Are you ready?」
「「「OKーッ!!!」」」
「「ハデに決めるぜェ!!!」」
流暢な英語が聞こえたと思ったら、次の瞬間には爆音が鳴り響いていた。
本当になんなんだ……この学園は。