ったく。なんで久しぶりのschoolだってのに、interviewなんか受けなきゃならねぇんだ。
つい先ほど、音楽雑誌の記者が来るという部屋に、寮に帰ろうとしていた元親と共に押し込められた。
元親は工業科の舎弟どもからもらったgadgetの部品を自前の工具で組み立てている。
こういう時にヤツに声をかけると、すこぶる機嫌が悪くなるんだよな。
元親みたいに暇つぶしになるようなモノを持っていない俺は、部屋の窓から外の通りを見ていた。
下校時間のpeakを過ぎ、人っ子1人いない。傾きかけた夕日が長い一本道を朱色に染め上げていく。
その道はブランド品で着飾った芸能科の連中よりも素朴で地味だったが、何ともいえない趣があった。
ライブに収録にイベント……
目まぐるしい日々の中にいるからこそ、こういうモノの美しさが分かるのかもな。
「…………Hum?」
外を眺め始めてから5分も経っていないだろう。
なにもなかった道になにかが見えた。
注意深く見てみると、ソイツは専門知識習得科の猿飛佐助だった。
いつも真田の野郎と一緒にいるはずの猿がなんで1人で?
頭に浮かんだ疑問は、ヤツが立ち止まり、抱えなおしたモノによって解消された。
「〜♪女か」
元親の邪魔にならない程度に口笛を吹いた。
いや、珍しいモンを見ちまったぜ。いつも、旦那旦那とうるせえアイツに女が出来てたなんて。
これはかなり良いネタだ。しばらくはこのネタであの猿をいじれるにちがいない。
「なに、ニヤニヤ笑ってんだ?」
「Oh……終わったのか、元親」
横目で見れば、イスから立ち上がった元親がこちらに歩み寄ってきた。
「まあな。結構簡単だったぜ」
そう言って組み立てたブツを投げ上げる相方。活き活きとした感じで作ってた割には、完成体に満足いってねぇみたいだな。ま、大方、簡単すぎてつまんなかったんだろうな。
「んで、お前はなにを笑ってやがんだ?」
「Ah〜、アレだアレ」
ひょいひょいと窓の外を指さす。その指先が示す方向を確認した元親は、目を見開きひどく驚いていた。
「ありゃあ、猿飛じゃねえか」
「な?面白いだろ?」
専門知識習得科、通称専科の連中は個人情報が一切掴めない謎の学科だ。
その学科で、1・2を争うほどの腕を持つ猿。ヤツが人目も気にせず、女を大事そうに背負ってるなんて、普通なら有り得ねえ。
そうだ。普通なら有り得ない筈のことが、現在進行形で起きている。
これほど興味をそそることが最近あっただろうか。
「面白くなりそうだな、政宗」
ニヤリと口角を上げて笑う相方に視線で返事を送る。
それに納得した元親と俺は、携帯をとりだし、その光景をおさめた。
パシャ。
ピロロン。
猿のヤツは俺たちが聞いたところで答えないだろう。それに、舎弟どもを使えば、あの背負われているkittyにファンによる被害が及んだり、猿に気付かれて阻止されるに違いない。
「確か、仕事はsummerまで撮影ぐらいしかなかったよな?」
「ああ。代わりに夏休みは海外だがな」
「Hum……ま、3ヶ月もありゃ余裕だろ」
「フッ。そうだな」
猿の背中で安らかに眠る女を見つめながら、俺たちは新しい玩具を見つけた子どものように笑った。