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「苗字殿にお聞きしたいのだが、昨日食堂に居られたか?」

「え、まあ」

突然ふられた話に戸惑いながらも返事をする。真田くんはそれを聞くと、納得したように頷いた。

「実は、某も昨日は食堂に居ったのだが、其方が食堂の御老人方と話して居られるのをたまたま、見たのでござる」

「ぶっ!」

え。あの数少ない人の中に、真田くんいたの!?

あの、カレーにがっつきながら喋っていた……女とは思えないような行動を見られていたなんて。

恥ずかしさで顔が真っ赤っかになった私をよそに、彼は淡々と話を続けた。

「某等にとっては信じられない光景でござった。故に、其方といつか話してみたいと思っていた」

あー、やっぱりこの学園で女らしくない女子なんて私ぐらいだから、物珍しかったのかなぁ。

「ど、どこいらへんが信じられない光景だったの?」

いや、カレーにがっついてるところだとは分かるよ!
でもさ、違うなら違うで……というか、違わないだろうけど、否定して欲しい。
あんな恥ずかしい姿見られていたなんて、きゃぁぁああああ!!

「どこ……かと言われ申しますと」

考えるような顔付きで唸り始めた真田くん。

否定してくれないってことは、もしかして気を使わせちゃってる?
あんな見苦しい姿を見せた上に、彼の良心につけこんで気を使わせちゃってるのか!?


今にもパンクして蒸気が噴き出しそうな頭で、必死に謝罪の言葉を考えた。

「さ、真田くん、あ」

「あっれー。旦那ぁ、こんなトコで女の子とナニやっ」

「ぎゃぁああああああ!」

「「えっ!!」」

そこで私の記憶は途絶えた。

落ちていく意識の中、突如、なんの気配も音もなしに、私の目の前に現れた彼は誰なのだろう。そのことだけが脳内を埋め尽くしていた。

















「……ダメだねぇ」

「お体が悪かったのだろうか、佐助」

「いや、分かんないよ〜。俺様来たばっかだし」

佐助に驚き、倒れてしまった苗字殿。
いくら声をかけても目を覚まさないご様子。一体、どうなされたのか。

「てか、この子昨日の子じゃない?」

苗字殿を抱きかかえながら、顔をのぞき込み呟いた佐助。

おなごの体に許可なく触れるなどっ!は、ははは、破廉恥でござぁあらぁあああ!!!

「さ、さささ佐助っ!!」

「あー、破廉恥だとは思うけど、道端に捨ててくワケにはいかないんだから叫ばないでね」

「むむっ!」

確かに、佐助の言うとおりでござる。
今はこの荷物を急ぎ御館様に届けなければならぬ。しかし、苗字殿をこのままにはしておけぬ。
そう考えた時にもっとも良い方法は1つしかなかった。

「佐助、俺はこの荷物を御館様に渡してくる。お前は苗字殿を寮まで連れていってはくれぬか?」

「ん〜、良いよ。そのつもりだったし」

「かたじけない。俺もすぐに向かうようにする。あとは頼んだぞ」

「了解。んじゃ、この子は連れてくね」

佐助はそのままくるりと反転し、彼女に余計な衝撃を与えないように歩みを進めた。

俺も急いで御館様のもとへ向かい、事情をお話しせねば。

グッと引き手を握りしめ、力の限り大地を蹴る。
目指すは体育科専用グラウンド。

御館様ぁああああああ!
真田幸村、只今参りまするぅあああああああ!!



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