1 「起きたか」 目を覚ますといきなり篠原先輩のどアップ。 「ふぇ……? ここ、どこぉ?」 呂律がまわらない口で喋りながら、キョロキョロと辺りを見回すけれど自分の家でないことはわかる。 「俺ん家だ」 「え……? 篠原先輩のおうち?」 何で俺、先輩の家にいるの? うまく頭が働かないけれど頑張って記憶を辿ってみる。 えっと確か……、あ、そうだ! 新入社員歓迎会で先輩たちにお酒をすすめられて飲んでるうちに眠りこけちゃったんだ。 それで多分、俺のことを一番に可愛がってくれて俺が一番尊敬してる篠原先輩に運ばれたんだろう。 よく考えたらお酒にあまり強くないんだよね。 だけど先輩たちと話してたらついつい楽しくなっちゃって……。 篠原先輩、仕事で疲れてるはずなのに迷惑かけちゃったな。 「先輩、めーわくかけちゃってごめんなさぁい」 「何か謝られてる気がしないなぁ」 ハハハ、と笑いながら髪をくしゃくしゃっとされる。 先輩は器が大きくて優しいし、仕事も完璧にこなせるから憧れの的だ。 俺とたった3つしか歳が違わないのに何でこんなにすごいんだろう。 ルックスも俺とは正反対で男前な顔立ち。 もちろんそんな先輩を放っておくはずもなく、女性社員から絶大な人気を得ている。 そんなことを考えながら、ぼーっと横顔を見つめているとふと目が合った。 「なんだ、気持ち悪いのか? ちょっと水持ってくるから待ってろ」 うーん、そういうわけじゃないんだけど大人しく待つことにする。 すぐに先輩は戻ってきて水を持ってきてくれた。 「ほら。自分で飲めるか?」 「んー」 返事にはなっていないけれど両手を伸ばすと、コップを渡してくれた。 そのまま口に移そうとするもののコップの中の水は胸元にバシャッとかかってしまう。 「ひゃっ!? 冷たぁい」 「あーあ。寝ながら飲もうとするから」 普通に考えれば寝ながら飲むとこうなるってわかるけど、酔ってたからか考えもしなかった。 「うぅ、ごめんなさい……」 何だかワイシャツがお腹にぴたっと張り付いて気持ちが悪い。 だからボタンを外そうとするんだけど何故かうまく外せない。 「あれ? ……あれぇ?」 「何やってるんだ」 「ボタンが外れないんですぅ。おかしいな〜」 「俺がやってやる。大人しくしてろ」 先輩はボタンを外して、ワイシャツも脱がしてくれた。 そしてご丁寧にハンガーにかけて干してくれたみたいだ。 |