1 あの痴漢にあった日から1週間……。 どうも身体が疼いてしょうがない。 それも全部佐々木さんのせいだ! あんなことをしてきた奴にさん付けって嫌だけど、やっぱり年上だしなぁ。 悶々と考え、駅から家までの道のりを歩いていたら誰かに呼び止められた。 「君、コレ落としたよ」 後ろを振り返ると、呼び止めたであろう人の手に俺の定期入れがあった。 いつの間に落としてたんだ。 とにかく、拾ってもらってよかった。 「ありがとうございます」 そう言って定期入れを受け取ると、頭上からクスクスと笑い声がする。 何だ? ふと拾ってくれた人の顔を見ると、今さっき考えてた佐々木さんがいた。 ああ、幻覚か。 ここ1週間、怒りに震えてずっと考えてたからとうとう幻まで見えるようになったんだ。 俺は現実避難した。 「あれ?ひょっとして俺の事覚えてない?」 目をこすりもう一度見てみた。 やっぱり佐々木さんだ。 現実避難してみたけど無理だったか。 |