1 ……ヤバい。 楓とデートの約束なのに寝坊しちまった。 俺は待ち合わせ場所の駅前に向かって走っていた。 どれだけダッシュでいっても後10分はかかるなぁ。 左腕にしてある腕時計を確認する。 10時15分……。 待ち合わせ時間より15分も遅れている。 走るスピードを緩めることなく駅前へと急いだ。 「ハァ……ハァ……」 人がたくさんいて、どこに楓がいるかわからない。 キョロキョロと探していると、後ろから聞き覚えのある透き通った声がした。 「和人、遅いよ〜。てっきり嫌われちゃったのかと思ったぁ」 若干涙声になりながら楓が言う。 「ホントごめん。寝坊しちゃって…」 「でも良かった、きてくれて。それよりどこ行く?」 黒目がちの吸いこまれそうな瞳で見つめられ、思わず視線をそらす。 「うーん……、そういえば見たい映画があるって言ってたよな。映画行く?」 「うん!行く行く〜」 嬉しそうな顔をしてギュッと腕に抱きつかれた。 人前だし一瞬焦ったけど、楓の顔を見てたらそんなこと気にならなくなる。 俺達はバカップル丸出しで(周りから見ればただの友達だが)歩き出した。 |