5 「ねぇ、何であんなことをしてたか気になる? 顔にでてるよ」 クスクスと口に手を当て、城之内が笑いながら聞いてくる。 笑ってる姿は何とも上品で、ゲラゲラ笑ってるそこらの女子とは比べ物にならないくらい。 「え、え? あ、いや……別に、気になるなんてっ……」 顔にでてる、なんて言われてアタフタと否定の言葉を探す。 ……がこれじゃ気になってるのは丸見えだ。 こういう場合、どう返すのが正解なのだろうか。 「フフ、君には特別に教えてあげる――」 目をあちこちに泳がせていると、人差し指をたててパチッとウインクしてきた。 わぁ、何かアイドルみたい……。 平凡な俺がこんなことやったら、ただただキモイだけだもん。 想像したら鳥肌がたってきたので、ちゃんと話を聞くことにした。 数分後――。 こ、こえー……。 特別に教えてあげるなんて言われるもんだから、最初はワクワクしながら聞いてきた。 それが次第に怖くなってきて、今じゃ足が震えそうなほど。 とにかく衝撃だった。 その聞いたことを簡潔に説明すると、城之内に告白してきた人をこの教室に連れてきてムリヤリ性的なことをするらしい。 爽やか好青年君もその一人だって言ってた。 ということは告白してきた人は皆、あのよくわからない鎖につながれてあんなことやこんなことをしちゃったって事? 怖い。 そんなマニアックな趣味をもってただなんて1ミリもわからなかった。 普段のあの、みんなのアイドル的存在の城之内からは想像すらできない。 「そんなに震えて……もしかしてビビらせちゃったかな? 大丈夫だよ、君にはそんなことしないから」 「あ、ビビってなんか、ない……です」 「それより、何で君にこんなこと話すかわかる?」 「……?」 何でだろう? 今まで気にしてなかったけど、そう言われると気になる。 「君に惹かれたからだよ」 「え?」 ひかれ……惹かれたって……? 言われた意味はわかんないけど、その真っ直ぐな瞳を見てたら何故だかドキドキしてきた。 「最初見たときは、小さいなぁってだけだった」 「ちょッ……」 「僕も男にしては小柄なほうなのに、もっと小さい男がいるんだもん。そりゃ最初は気になるよ」 「え、ちょ、あの……」 一番気にしてることをズバズバ言われ、黙ってるわけにはいかなくなった。 俺の立場って何なんだろう……。 「だけど見ているうちに明るくて真面目なところとか、何かあるとすぐに動揺しちゃうところとか……そういう性格に惹かれちゃったんだよね」 「…………」 もしかして、もしかしなくても……これって告白? 男が男に? しかも俺ってそんなに見られてたんだ。 そんなに動揺してたかな。 どうしよう、顔あげられなくなっちゃった……。 多分耳とか赤くなってると思う。 この教室が暗くて良かった。 「だからさ、付き合ってくんない?」 しばらくの沈黙の後、疑問が確信に変わる一言。 それにしても随分、上から目線のような……。 外見に似合わず男らしい言い方だな。 「え、えっと……男同士、で?」 人生で一度も告白されたことのない俺が、男同士で付き合うなんて考えられなかった。 あ、でも城之内は女の子以上のかわいさだけど! 「やっぱ、ダメ……かな?」 さっきとは対照的な女の子のような言い方で聞いてくる。 睫毛をふるふると震わせながら涙目でじっと見つめられると、NOなんてとても言えそうにない。 男はこういうのに弱いんだ。 だから俺は思わず、 「うん。い、いよ……」 YESと答えてしまった。 何とも弱弱しい声だったけど。 その途端、パァッと眩しいくらい顔を輝かせて無垢な笑顔で嬉しそうに笑った。 何かこう見ると普通の子なんだなぁ。 いつもはとても手が届きそうにない存在なのに、今はこんなに近くにいる。 幸せそうな顔を見てたら俺まで楽しくなってきて一緒に笑いあった。 |