1 今日は12月24日。 全国のカップルたちがラブラブムードになるクリスマスイブ。 クリスマスは25日なのに何でか24日のほうが盛り上がるんだよな。 ……と、こんなどうでもいい話は置いとくとして。 俺はさっきから携帯を握りしめてベッドでじっとしている。 さっきから何十回も見ている時計をもう一度見た。 「6時30分、か……」 佐々木さんから電話が来ない……。 一応言っとくけど、俺は別に期待しているわけじゃないけどね! クリスマスという一大イベントの日に誘わないわけがないって思っただけだし!心の中で言い訳をし、そう思い込ませる。 あの出来事があってから約半年。 あれから何度も会ってしまい、何の違和感もなくご飯に誘われて行ったこともある。 そうやって面と向かって話すたびに少しずつ、少しずつだけど惹かれ……ていたのかもしれない。 最初は変態、気持ち悪いとばかり思っていたのが最近ではかっこいいと思うときがたまにある。 変態な佐々木さんが、紳士的な振る舞いを見せてちょっとドキッとしたときもあった。 やっぱり大人だからそういうことは当たり前なんだろうけど。 大人、ね……。 外見だけで見れば認めたくはないけどかっこいいんだし、本命の彼女いるに決まってるよな……。 俺のことはただからかってただけかもしれない。 よく考えたら付き合ってるわけでもないんだし。 ……ってか男同士で付き合うとか何だよ、俺。 「はぁ〜、くっだらない。やめよやめよ!」 独り言を呟きながら何か食べようとドアを開けたとき。 ピルルルルル♪ 「も〜、誰だよ」 一瞬ドキリとした。 と同時にもしかしたら……という淡い期待も抱いた。 でもそんな期待は無理矢理押し潰し、ベッドに戻って携帯を見る。 「佐々木さん……」 出るかどうか迷ったけれど無視することはできず、通話ボタンを押した。 『あ! もしもし、俊?』「そうだけど。何?」 待ってたことがバレたくなくてわざと不機嫌な声を出す。 『あれ? もしかして誘ってくれないから拗ねちゃった?』 「なッ……! 別にそんなんじゃないし!」 不機嫌な声をだすのは逆効果だったみたいだ。 何でアイツなんかのために拗ねなきゃいけないんだ! 『今日はクリスマスだし一緒に家でご飯でも食べない?だから拗ねないでね』 完全にからかってるとしか言い様がない声色で言われて頭に血がのぼる。 だけど彼女いなくて良かったってホッとする自分もいる。 「ッ……! だから拗ねてな……」 『あ! それとケーキも用意してあるから。今から来れる?』 反論しようとすると言葉を遮られ、またまたムッとなる。 でもこんなこと絶対口になんか出せないけど、誘われたことが嬉しくて嬉しくて。 鏡をふと見てみたら頬が信じられないほど紅潮した自分がいた。 「う、うんっ。どうせ暇だったし!」 『わかった。じゃあ家で待ってる』 急いで支度をし、嬉しいというのが顔にでないよう気を付けながら家を出たのだった。 |