ぼちぽち | ナノ
特別な人 ‐健悟-
高校に入学して最初の友人は、不思議なふわふわした奴で。
話しやすいし、その雰囲気に癒されて、どんどんはまっていった。
気づいたらそれは友情を通り越して、いつのまにか恋愛感情になってしまっていた。
それはもう悩んだ。
同性をそういう対象にできたことには驚くばかりだった。
純粋無垢な友人に、邪な感情を持つ自分にも嫌気がさした。
だけど悩んだって仕方がなかった。
だって俺は、ゆきが好きなんだ。
好きになってしまったからには仕方ない。
だけど、いつも見ていた分、それに気づくのも早かった。
龍がゆきを好きで、本当に大切に思っていることも、その目線の優しさも。
ゆきも龍が大切で、いつもその存在を気にしていることも。
勝ち目なんてない、そう思っても想いを封じ込めることなんてできなかった。
弱っているゆきに付け入ろうとした自分は汚い。
だけど自分に正直に動いた結果があれなんだから救いようがない。
泣かせてしまったことに心は痛んだ。
その綺麗な涙と、やさしい拒絶に、家に帰ってから俺も少し泣いた。
悔しかったのか、悲しかったのか、なんでかはわからない。
好きだった、本当に好きだったんだ。
少しずつ想いは昇華していって、今では二人を心から祝福できる。
二人とも、俺の大切な友人だ。
だけどさ、本当に、好きだったんだ。
だから今でも、おまえは大切で特別な人だよ、ゆき。
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