ぼちぽち | ナノ
想い ‐龍之介‐

『りゅー!』

俺より小さくて、頼りなくて、だけど意外としっかりしていてどこまでも温かい。

守りたいと、いつも強く思っていた。


だが、庇護欲と愛情は、いつのまにか独占欲と恋愛感情へと変わってしまった。

誰よりもずっと傍にいたい。
由希は俺のだ。
たまらなく愛している。
存在に焦がれる。


あふれそうな気持ちを、必死でこらえた。

こんなにも傍にあるこの存在を失ったら、俺はきっと生きていけない。
誇張でも冗談でもなく、そう思う。

無価値で無機質すぎる世界に失望して、きっと生きて入られなくなる。


『龍は優しいね。』

恐怖で誰もが恐れる俺を。
真っ直ぐには見つめてくれない俺を。

『怖くないよ。』

拒絶せずに、受け止めて近くに居てくれる。


それだけで、十分だ。
存在があるだけで、俺は満たされる。
安心して、生きていける気がする。
由希が、他のやつを愛したって構わない。


だから、どうか。
だから、せめて。


遠くへは、行かないでくれ。
俺の見えるところで、笑っていてくれ。


その笑顔が、その存在が。
それだけが、俺に安らぎと幸せを与えてくれるんだ。






そう、思い続けていたのに。

今は、信じられないほどに幸せで。

もう離したくない、だなんて。
ずっと俺だけの傍に、だなんて。


俺はどれだけ欲深いんだか。




ひとつ溜息はついたが、それでも心は落ち込まなかった。



- 56 -



[*前] | [次#]


back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -