ぼちぽち | ナノ
想い ‐龍之介‐
『りゅー!』
俺より小さくて、頼りなくて、だけど意外としっかりしていてどこまでも温かい。
守りたいと、いつも強く思っていた。
だが、庇護欲と愛情は、いつのまにか独占欲と恋愛感情へと変わってしまった。
誰よりもずっと傍にいたい。
由希は俺のだ。
たまらなく愛している。
存在に焦がれる。
あふれそうな気持ちを、必死でこらえた。
こんなにも傍にあるこの存在を失ったら、俺はきっと生きていけない。
誇張でも冗談でもなく、そう思う。
無価値で無機質すぎる世界に失望して、きっと生きて入られなくなる。
『龍は優しいね。』
恐怖で誰もが恐れる俺を。
真っ直ぐには見つめてくれない俺を。
『怖くないよ。』
拒絶せずに、受け止めて近くに居てくれる。
それだけで、十分だ。
存在があるだけで、俺は満たされる。
安心して、生きていける気がする。
由希が、他のやつを愛したって構わない。
だから、どうか。
だから、せめて。
遠くへは、行かないでくれ。
俺の見えるところで、笑っていてくれ。
その笑顔が、その存在が。
それだけが、俺に安らぎと幸せを与えてくれるんだ。
そう、思い続けていたのに。
今は、信じられないほどに幸せで。
もう離したくない、だなんて。
ずっと俺だけの傍に、だなんて。
俺はどれだけ欲深いんだか。
ひとつ溜息はついたが、それでも心は落ち込まなかった。
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