ぼちぽち | ナノ
3

「きれい…。」

パチパチと光る花火は、儚いけれどとても綺麗だ。

そういえば、今年の夏は花火が出来なかった。
後から残念がった僕を、龍はふふんと鼻で笑ったっけ。

優しく小さな光に、心のしこりがすっと消えていく気がした。


ただただ無言で、夜の公園で2人で花火を見つめる。
異様だけれど、不思議なくらいに落ち着いていて居心地がいい。

同時につけた線香花火は、龍の方が先に消えた。
そっと静かに小さくなっていった。
対する僕のは控えめにまだ続いている。

何であれ、僕が勝つなんて初めてだった。
いつもいつも、背中ばかり見ていた。

驚いたと同時に、少し嬉しかった。
なんだかやっと。

「ね。僕、龍に―」

追いつけたよね。

そう言おうとした。

だけど、顔を上げた瞬間に言葉は失われた。

不自然なほどに近い、整った顔。
そっと優しく、合わせられた唇。
スローモーションのような時間。

唇はすぐに離れたけれど、状況を把握するのにそう時間は掛からなかった。


こみ上げてくる不思議な感情に、どうすべきか分からなかった。


ただその強い眼差しから、目をそらせなかった。




「愛してる。」

苦しげに眉根を寄せて、龍は言った。



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