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ガラガラと、網戸が開けられる音がした。
お父さんたちが帰ってきた後、いつも通りに夕飯を食べた。
散々泣いた眼も、気づかれないくらいには腫れはなかった。
でも、部屋に戻っても勉強なんてする気になれなくて、ついベッドでだらだら過ごしてた。
「由希」
一瞬で体と心が強張った。
大好きな声なのに、泣きそうになった。
「りゅう…。」
体は起こしたものの、目が合わせられない。
どうしよう。どうすればいい?
かすかな夜風が吹き込んでくる。
どこからか、小さく虫の音が聞こえた。
「えっと…。」
「由希」
変に掠れる僕の声を遮って、龍はいつもの声で僕を呼んだ。
恐る恐る顔を上げると、全く変わらない龍が、レジ袋を片手に立っていた。
「花火、しよう。」
その時の僕は、きっと凄い間抜け顔だったに違いない。
突拍子もない、まるで思ってもみなかった言葉だった。
例えるなら、豆鉄砲をくらった鳩のような顔で、僕はこくりと頷いた。
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