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「・・・ありがとう。」
掠れた声で、なんとかそれだけを口にした。
「じゃあ、また明日な。」
いつものように手を振る健悟にうなづいて、くるりと背を向けて歩き出す。
頭の中で、ぐるぐると健悟の言葉が回っている。
先で待っていた龍は、聞こえていないにしろ見えていたはずだ。
だけど、何も言わなかった。
僕は、龍を好き。
今、近くにいる龍。
告白すれば、離れてしまうかもしれない。
怖い。
伝えたくない。
だけど。
その心の中には。
辛いよ、伝えたい。
伝えなきゃ。
必死に叫ぶ、ぼくがいた。
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