4
こんなの、僕の日常じゃない。
龍がいない。
隣に、龍がいない。
からっぽの空間に、耐えきれなくて目をそらす。
コンクリートの地面にはところどころに染みみたいな汚れがある。
幻影を、幻聴を振り切るようにまばたきを繰り返した。
さっきよりもなぜか重い体を、必死で動かす。
いつもの行動が、しんどくてしんどくて、いつもじゃなかった。
ガコン、とカフェオレが落ちた音も、いつもよりも重かった気がした。
スイカオレは、美味しくなかった。
無駄に甘くて絡みつく味。
確かにスイカの味がしたけど、全然美味しくなかった。
夏の暑い日、龍の部屋で食べたスイカが、食べたい。
龍の存在が、美味しいスイカが、暑い夏が。
全てが、胸が痛いほどに、恋しかった。
- 32 -
[*前] | [次#]
back