3
「由希っ。」
後ろからガバッと抱きつかれて、僕はよろめく。
だって頭一つ分も身長が違うんだもの。
「昼、食べよーぜ!」
「うん。カフェオレ買っていい?」
「おう!」
いつもみたいににっこり笑う明るい健悟。
僕もいつもみたいに自販機に向かう。
いつもみたいに3列あるうちの2列にカフェオレが並んでいる自販機。
いつもみたいに悩んで。
「あ、」
“いつも”じゃなかった。
「新商品…。」
スイカオレが、端にぽつんと在った。
もう、夏は終わっちゃったのに。
『早く決めろよ。』
ふと、いつもの声が聞こえた。
思わず隣を見上げる。
誰も、いなかった。
空白
からっぽ
胸がきゅうっと苦しくなった。
- 31 -
[*前] | [次#]
back