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龍は、答えなかった。
自分の中から、答えを探してるみたいだった。
ブゥゥン、という扇風機の音がやけに大きく響く。
僕も龍も、じっと動かない。
これは現実なんだろうか。
あまりにも静かな今に、かすかな疑問がわいた。
「…何でなんだろうな。」
ぽつり、龍が呟いた。
何の感情もこもってないようにも、全てが詰め込まれているようにも聞こえた。
つまり、僕には分かんなかった。
龍が何を考えてるのか分かんなかった。
ずっと一緒にいるのに、こんなに近くにいるのに。
少し、寂しくて悲しかった。
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