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結局、相手は5人くらいいたのに、勝ったのは龍だった。
龍は気だるそうに、肩を回して。
そして、僕に気付いた。
「由希。」
少し目を見開いた後、龍はゆっくり近づいてきた。
もうすっかりいつもの龍。
「何してる。危ないだろ。」
危ない原因は龍なんじゃ。
思ったけど、口には出さない。
「たまたま見ちゃって、止まってた。」
本当にたまたま、なんだよね。
この棟は、僕達の教室がある棟じゃない。
「・・・そうか。」
軽く頷いて、龍はついと視線を横に逸らした。
「見たら駄目だった?」
ふと思ったことを、口に出してみる。
もしかしたら、誰にも知られたくない喧嘩だったのかもしれない。
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