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「早く食え。」
龍から、軽く頬を殴られる。
本当に優しい手つきだから、“殴る”っていうより“触る”。無意識に頬が緩む。
「はーい。」
龍の顔を向いてそう答えたけど、龍はどこか違うところを見てた。
「・・・お好み焼きだぁ。」
「え、パンじゃねぇの?」
「味が、そのもの。」
自分が一口かじったパンを、健悟に差し出す。
健悟は何のためらいもなく、それを一口食べると、僕と同じことを言った。
「パンだけど、お好み焼きの味だな。」
そういう商品だし、当然なんだろうけど。
新しいものに出会うと、得した気分になるんだよね。
新鮮で、わけも無く嬉しい感じ。
「龍も食べてみてよ。おいしいから。」
健悟から返って来たパンを、龍にも差し出す。
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