キリリク | ナノ
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それでそのまま、程よく雨に打たれながら帰れば良かった。

今ではそう後悔もするが、なんだか気が向いた俺は、ふらふらと目指す方向を変えたんだ。


頭にふと浮かんだのは、あの理央の花園の雨に濡れた姿でも見たいな、ということだった。
風邪を引くとか、濡れるとか、そんなことはどうでも良かった。


てくてくと歩き、人気の無い場所で角を曲がった。

その途端、身体に衝撃を感じ、下を向いていた目を思わず閉じた。

なんともべたなことに、曲がりがてら人にぶつかったのだと脳はすぐに理解した。
落ち着いて、だが素早く離れつつ、すいませんと口を開く。

「・・・あ、」

目を上げると、目に入ったのは見知った人物。
相手も俺と同様に驚いたようだったが、すぐに口元をにやりと歪めた。


「ふぅん、奇遇だな」

運命か、とからからと笑う人物は、見間違えるはずもない会長だった。

長めの漆黒の髪も、ワイシャツも、全てが雨に濡れて張り付いている。
濡れているのは俺だって同じだが、濡れた彼からは、壮絶な色気が放出されていた。

「な、にしてるんですか」

その色気にあてられて、少し戸惑いつつも平静をつくろう。
言葉を発したのちに深呼吸すれば、頭がいつものように動き出した。


こんな校舎からも寮からも離れた林の近くで、この雨の日に会長が何をしているんだ。
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