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あらあら、まあまあ。
どういう偶然だろうか。
目の前で不敵に笑う濡れた会長に、少し眩暈がした。
朝から天気は良くはなかったが、まさか雨が降り出すとは思わなかった。
昼下がりに降り出した雨に眉をひそめる。
こういう日に限って、折り畳み傘を忍ばせてない。
更には、頼みの真澄は風邪をひいての病欠だ。
横で授業なんて無視して寝続ける陽にも、今はどこかへ行っている大河にも期待できそうにない。
少し憂いながらも、俺は黒板へと向き直った。
帰りまでには止んでくれないかなあ、なんて願いも虚しく。
未だ、さあさあと音を立て、空は小雨模様。
事務室へ行けば傘を貸してくれるらしいが、それも面倒だ。
雨は、嫌いではない。
特に、今日の雨はなんだか静かで綺麗で、心地良さそうだった。
だから、どうせ寮までだし濡れて帰ろうと、ふらりと雨の中へ歩き出したんだ。
もちろん、雨を楽しむために、うるさい二人組は置いてきぼりにして。
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