キリリク | ナノ
3


こいつは、生徒会やらなんやらの人気者の方々にひどく好かれている。
まるで神かのごとく崇められている生徒会に、だ。

おかげでいつも事件の中心、誹謗中傷は絶えない。

せっかく助けてくれたけど、もっと波風たたない奴が良かった。


「うるせぇよ!」
「引っ込め、オタク!」
「七瀬様に関わるな!」

いろんな声が、口々に彼を罵倒し始める。
うるさいのはどっちだよ、俺は頭が痛いってのに。

思わずこめかみを押さえながら席を立つ。
集まる視線に、小さく笑って「保健室に行ってくる」と告げる。

するとまたまた一転、次は心配の言葉が口々に飛んできた。

やっぱりひとりでいるほうが絡まれるのは、俺が弱そうなのかな。


ちょっと本気で痛い頭に眉をしかめ、さっさと保健室へ向かう。

「…っは?」

くんっといきなり体が傾いて、腕に力が加わっていて、その先は渋谷で。

…どうやら、腕を引かれて歩いている。

「え、し、渋谷?」

混乱しながら首を傾げると、渋谷は口元で笑った。


「ふらふら危なっかしいんだよ。それに、編入したときから七瀬の事、気になってたしさ」


…ひどく、頭が痛んだ。

なんてことだ、俺の平穏が崩れようとしてる。

どうすれば、今更どうすればいい?



痛む頭を押さえながらも引っ張られていた俺は、これがただの幕開けに過ぎないのだと、全く知らなかった。
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