キリリク | ナノ
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俺が向かってるのは化学教師の職員室。
化学の教師とはいえ、担任してるから、1年職員室にいるのが本当なんだけどね。

ホスト教師だって、お昼くらい仲良しの友達と食べるってこと。
相手も若いイケメンの男だし、マイナスどころかプラスポイントだよな。
若干どころか、かなりサドな奴だけど。

でも、根は親切で良い人だなぁと思う!


「よっ、」

軽く声をかけて中に入ると、相変わらずがらんとしていた。
いつきても人が少ないなぁ、ここ。

「・・・あぁ、おまえか」

自分の机で書類に向かっていた相手は、こっちを見て目を細めた。
薄いフレームと頭の良さそうな鋭い瞳が、俺を見つめる。

「なんだ、その袋」

「手作りお菓子」

うらやましいだろ、とニヤリと笑えば、ふんと鼻で笑い返された。
だけどそれでも、俺の心は上機嫌なままだ。


実はこの前、こいつが他の若い先生とキスしてるとこ見たんだよな。
生徒だけじゃなく、先生までもが・・・!
この学園って本当素晴らしすぎる。

表面上は勝気にいつも通りを演じつつ、心の中で存分ににやける。
ピンクがメインの包装を解くと、出てきたのはハート型のクッキーだった。

ひとつ口にくわえつつ、中に入っていたカードを読む。

可愛らしい丸文字が、俺に一生懸命に愛を語っていた。


「ふうん、ずいぶん女々しい奴だな」

隣の奴は冷たい瞳で切り捨てたが、なんとも温かい気持ちになる。
頑張ってる子の努力だとか、緊張だとか、きっと俺との共通点があるからだろう。


「・・・美味い」

口に広がる甘さに、思わず口の端がゆるむ。
胸に広がる温かさに、カードをそっと撫でた。

こんな優しげな姿、生徒の前では見せないけど。
俺の萌えのために、ずっと俺様で理不尽でホストみたいな教師でいるけど。

少しくらいは、お礼をしてあげようかな。


「なぁ、」


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