キリリク | ナノ
4
俺が向かってるのは化学教師の職員室。
化学の教師とはいえ、担任してるから、1年職員室にいるのが本当なんだけどね。
ホスト教師だって、お昼くらい仲良しの友達と食べるってこと。
相手も若いイケメンの男だし、マイナスどころかプラスポイントだよな。
若干どころか、かなりサドな奴だけど。
でも、根は親切で良い人だなぁと思う!
「よっ、」
軽く声をかけて中に入ると、相変わらずがらんとしていた。
いつきても人が少ないなぁ、ここ。
「・・・あぁ、おまえか」
自分の机で書類に向かっていた相手は、こっちを見て目を細めた。
薄いフレームと頭の良さそうな鋭い瞳が、俺を見つめる。
「なんだ、その袋」
「手作りお菓子」
うらやましいだろ、とニヤリと笑えば、ふんと鼻で笑い返された。
だけどそれでも、俺の心は上機嫌なままだ。
実はこの前、こいつが他の若い先生とキスしてるとこ見たんだよな。
生徒だけじゃなく、先生までもが・・・!
この学園って本当素晴らしすぎる。
表面上は勝気にいつも通りを演じつつ、心の中で存分ににやける。
ピンクがメインの包装を解くと、出てきたのはハート型のクッキーだった。
ひとつ口にくわえつつ、中に入っていたカードを読む。
可愛らしい丸文字が、俺に一生懸命に愛を語っていた。
「ふうん、ずいぶん女々しい奴だな」
隣の奴は冷たい瞳で切り捨てたが、なんとも温かい気持ちになる。
頑張ってる子の努力だとか、緊張だとか、きっと俺との共通点があるからだろう。
「・・・美味い」
口に広がる甘さに、思わず口の端がゆるむ。
胸に広がる温かさに、カードをそっと撫でた。
こんな優しげな姿、生徒の前では見せないけど。
俺の萌えのために、ずっと俺様で理不尽でホストみたいな教師でいるけど。
少しくらいは、お礼をしてあげようかな。
「なぁ、」
- 38 -
[*前] | [次#]
back