キリリク | ナノ
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「おい、おまえら」
今日も絶好調なエロボイスが教室に響いた。
きゃあきゃあと甲高く、抱いてだのと歓声をあげるのは全て男。
異様どころではない光景だが、ここでは自然な風景だ。
そんな騒がしい教室を睥睨しつつ、ホストのような男はそれを一言で収める。
「黙れ。HR始めるぞ」
ここまでの描写を読んだそこの君は、もちろん萌を感じたと思う。
この奇跡のような王道の学園に、ときめきを感じなかった者は今すぐにこの教室を出て行きなさい。
だって、この教室での王様は俺だから。
つまり、俺は王道の俺様教師だから。
・・・あはっ。
俺がこの素晴らしい腐の世界に出会ったとき、俺は高校生だった。
ごく一般的な、普通の男子高校生。
編入試験に受かるほどの学力も無ければ、自分勝手に転校するだけの権力も財力も無い。
・・・よし、じゃあ教師として潜入しよう!
思い立ったその日から、おれは努力した。
雑誌などでカッコイイ男を研究した。
教師になるための試験に合格するため必死で勉強した。
魅力的な体を得るために、毎日運動をして鍛えた。
エロボイスのためにボイトレも欠かさなかったし、立ち振る舞いの練習もした。
我ながら涙ぐましい努力だ。
そして、必死でこの学園に就職し早二年。
我ながらつくづく完璧な王道通りの俺様ホストもどき教師だと思う。
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