3
俺の記憶が正しければ、いや、確実に正しいだろうが。
今までの過去にも接点なんて、ひとつも無いのに。
ほんのこの前まで、全くの赤の他人だったのに。
これは、何なのだろうね。
懐かしく切ない痛み、そして、それを超えるあたたかさと心地よさ。
「・・・不思議な人だねぇ。」
「京も、」
穏やかに笑いあう。
ゆっくりと流れてゆく時、周りにあるのは美しい自然。
どれもこれも、素晴らしいじゃないか。
溶かされてゆく心の境界、まるで異世界かのような穏やかで優しい空間。
どれもこれもが、心地よいと感じるんだ。
煩雑で難解で奇怪な、現代社会と人の心。
俺自身も欲望のために入り込んだ、この学園。
「これは、思わぬ収穫だねぇ」
希少な愛おしいこの時間を、あと少し、陽の光と理央と共にまどろもう。
穏やかに過ぎる、あたたかい昼下がり。
- 32 -
[*前] | [次#]
back