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ただ何となく、行きたくなったんだ。
理由も根拠も、確かなものは何一つとしてない。
ただ、あの場所へ行けば、また会えると思った。
「相変わらず、すごいねぇ・・・」
一面に広がる花々は、どれもが美しく咲き誇っている。
深く吸い込んだ空気は澄んでいて、とても香しい。
無意識に頬が緩んだ。
人は思い出を美化し、再び見た時に失望も味わうと言うが、そんなことは全くない。
この景色はきっと、何度も見ようとも美しく、俺の心を震わすだろうと思える。
感動と共に温かい気持ちになりながら、俺は中央へと足を踏み出す。
目の前にあるのは、ただひたすらに美しい自然。
あたりにも人気は無い。
それでも、いや、それだからこそなのだろうか。
丁寧に面倒を見られている花々が、俺を呼んでいる気がした。
中央の芝生も、予想通りにふわふわしていて心地よい。
最高級の絨毯なんかよりも、ずっと素晴らしいだろう。
成人男性が大の字になって寝ることが出来るほどのスペース。
時刻はちょうど昼下がり。
俺は、ごく自然に簡単に、穏やかな眠りへと誘われていった。
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