キリリク | ナノ
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「会長助けてって叫んでよ」

「え!?」

真澄はぽかんと口をあけて、パクパクと無意味に動かす。
見開かれた目は俺を真っ直ぐ見つめてくる。

何をそんなに驚くかなぁ、理解に苦しむよ。


生徒会室にいるであろう会長。
そこからはかなり距離のある校庭の中央。

どれくらいの時間で真澄の声が聞こえて駆けつけてくるのか、タイムを計ろうとしているだけなのに。


「なんで僕なの。」

ようやく声を絞り出した真澄は、怪訝そうに俺を見てくる。

「他にいないからね」

俺は肩を竦める。
本当は王道編入生の陽なんだろうけど、ほら。

最近の若い子って何を考えているのか分からないよねぇ。

「え、同い年だよね」


「・・・。ほら、とにかく叫んで!」

しっかりと見つめながら言うと、後ずさりしながら真澄は口を開いた。
本当に押しに弱い。

「・・・たすけて―・・・」

声が小さいし弱々しすぎる!
これじゃ聞こえる聞こえない以前の問題だ。

「え、聞こえないのが問題じゃないの。」

想像してごらんよ、危機的状況なのだよ?
そんなに大人しく乱暴を受けたいのかな、真澄は。
それだけマゾヒストなのかな、真澄は。



「きょ―う―!!」

あれ、空耳かしら。
あまりにも熱心に真澄に語りすぎたのかねぇ。

「あ―い―し―て―る―っ!」

背筋が無意識に伸びる。
脳内が警鐘をけたたましく鳴り響かせる。

ガバッと、なにかが来た。
構えていた俺は、さっと真澄を差し出した。


「愛のキッス―!」
「ぎゃああああ!」


真澄の断末魔ともいえる悲鳴を聞きながら、視線を地に落とす。

ごめんよ、真澄・・・。
体が勝手に動いたんだ・・・。
・・・正当防衛って罪じゃないよね?



「真澄!邪魔してんじゃねぇよ!」

「僕を差し出したのは京だから!」

自分が被害者であると訴える真澄を押しのけ、陽はキラキラ輝く目で俺に迫ってきた。


「どうして俺をさそってくれないわけ。そんなにお仕置きされてぇの?」

・・・ほおらね。
最近の若い子って分からない。

どこまでも無邪気で綺麗ににっこりと笑う陽に、確かな恐怖を感じた。


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